まだまだ謎が多い自閉症スペクトラム障害。近年、「解離的な症状があるのではないか」という報告がありました。
自閉症スペクトラム障害の症状の原因解明に繋がる一手かもしれません。
具体的に自閉症スペクトラム障害にはどんな症状が現れるの?
どんな特徴があるの?
イマジナリーフレンドやタイムスリップ現象との関係は?
と言った疑問を論文の内容を噛み砕いて解説していきます。
もくじ
自閉症スペクトラム障害では解離がおこっていることがある
自閉症スペクトラム障害には様々な症状があります。
そして「解離症に似たような症状が自閉症スペクトラム障害を持っている人には現れているのではないか」という研究結果が上がっています。
もちろんこれは全員に当てはまるわけではなく、また中核症状(メインの症状)ではありません。
しかし、研究をしていけば新たな支援に繋がるかもしれません。
解離とは
そもそも解離とは意識や記憶、同一性や知覚について、普通は統合さている機能の破綻を指します。簡単にいうと、意識や記憶が自分のものだとわからなくなってしまうものです。
ちなみに解離自体は病気の症状ではありません。日常で起こる現象なのです。
しかしこれが病的解離というものになってくると、日常に様々な影響が出てきます。最新のDSM-5では、解離性同一障害、解離性健忘、離人障害、特定不能の解離症障害の4つに分かれています。

自閉症スペクトラム障害の解離の利用 イマジナリーフレンド
適応のために解離を使っている可能性が報告されています。これは、簡単にいうと人格をインストールしているのでは?とも表現されます。
例えば、他の人をそっくりそのまま取り組んで適応しようとしたり、自分の意識を飛ばして適応しようとしていることがあります。
取り込む先の人はイマジナリーフレンド(空想上の友達)のときもあるとされています。
解離性同一障害と違うのは、様々な人格がお互いを励まし合っていたり人格の制御が簡単だったりしていると報告されてる点です。
解離性障害が受動的(〜されている)のに対し、自閉症スペクトラム障害の人は能動的(自分でする)なのです。
これには、主語が欠落しやすいこと、自分と他の人との心理的距離がわかりにくいことの関連していると考えられています。
自閉症スペクトラム障のファンタジー没頭
自閉症スペクトラム障害を持つ人が何かに熱中しているとき、物思いをしている時、周囲の反応が頭に入っていないいことがあります。
これが、自閉症スペクトラム障害の解離とも言われています。

自閉症スペクトラム障害のタイムスリップ現象
日本人の方が提案した概念でタイムスリップ現象というものがあります。これは、自閉症スペクトラム障害を持つ人が、突然数年異常前の出来事を思い出すことです。どんなに昔のことでもつい先程、あるいは昨日の出来事であったかのように振る舞います。
例えば、友達を殴った子に理由を聞いたら、数年前に言われた悪口だったりするのです。
過去のトラウマが蘇ってくるフラッシュバックとの違いは、楽しかった出来事にも適応されることです。
思い出し笑いなどがこれに当てはまります。
原因としては、自閉症スペクトラム障害を持つ人が出来事を視覚的に画像として記憶していることがあります。そして、時間感覚の把握が苦手なのです。
そのため、記憶の古い新しいがわかりにくく、昔の記憶がついこの前のように感じられます。


自閉症スペクトラム障害の外傷体験
最後に、外傷体験による解離の可能性を忘れてはいけません。
自閉症スペクトラム障害を持つ人は、外傷体験を経験していることが少なくないのです。これは、虐待やいじめを受ける可能性が高いことからです。
研究の現状
自閉症スペクトラム障害と解離の研究は実はあまり行われていません。
問題点として、本人が解離だと感じていないことがあります。また、ボーっとしたり急にパニックを起こすのが自閉症スペクトラム障害の特性とされ、問題視されないことなども挙げられます。
今ある事例も、高機能で自分の経験を口に出せる人に限られてしまっているのが現状です。
まとめ
私(mido)が気になっていたことだったので、自閉症スペクトラム障害と解離的な症状について調べてみました。
問題行動に見えたり理解ができない行動も、解離が原因なことも。
自閉症スペクトラム障害を持っている人の中では、イマジナリーフレンドの助けを借りながら適応したり、タイムスリップ現象で昔の出来事を思い出していることもあるのかもしれません。
自閉症の謎が紐解かれるきっかけになればいいですよね。
参考文献
吉川徹, 金田昌子, 広汎性発達障害と解離性障害, 児童青年精神医学とその近接領域 52(2), 178-185, 2011.
杉山 登志郎 , 自閉症の精神病理, 自閉症スペクトラム研 13(2), 5-13, 2016.
野邑健二, アスペルガー障害における解離, 分子精神医学 9(2), 211-212, 2009.