自閉症スペクトラム障害を持つ人が苦しむのは、その特徴だけではありません。
自閉症スペクトラム障害特有の特徴と環境とのズレでストレスを感じることがあるのです。そして、そのストレスは二次障害になって、二重に苦しめることがあります。
二次障害とはなんなのか、どのようなものがあるのか。
なぜ自閉症スペクトラム障害を持つ人が二次障害を起こしやすいのか。
自閉症スペクトラム障害の二次障害に関するあれこれを紹介していきます。
もくじ
二次障害とは
二次障害とは本人の特性と環境のミスマッチによって起こる二次的な障害です。
自閉症の症状としては、こだわりやコミュニケーションの障害が挙げられますよね。そして、その症状によって引き起こされる症状が二次障害です。
その多くは自閉症スペクトラム障害の特性と周りの影響で引き起こされてしまいます。
例としては
- 心身症(原因のわからない頭痛、腹痛)
- チック
- 精神疾患(不安障害、うつ、強迫性障害、対人恐怖症、依存症など)
- ひきこもり
- 不登校
- 暴力、暴言
が挙げられます。
自閉症スペクトラム障害を持っていると二次障害を起こしやすい!?
自閉症スペクトラム障害を持つ人は、二次障害としてうつや不登校を引き起こしやすいと言われています。
例えば、知的な遅れのない自閉症スペクトラム障害を持つ子供(研究当時の名称:高機能PDD)の不登校率は、一般の小中学生の2~30倍高いという研究結果があります。
また、自閉症スペクトラム障害の小学生の10人に4人から5人は不安障害に当てはまるという報告もあります。
これらの報告は日本のみではありません。ノルウェーの大学病院やイギリスの大学も自閉症を持つ子に二次障害のリスクが高いことを発表しています。
それでは、なぜ自閉症スペクトラム障害を持つ子供達は不登校や不安障害と言った症状が出やすいのでしょうか。
それには自閉症スペクトラム障害特有の症状が大きく関わっています。
ASDのメインの症状:コミュニケーションの苦手さ
まず、自閉症スペクトラム障害特有のコミュニケーションの苦手さが挙げられます。
相手の気持ちを想像したり、言葉の裏を読んだり、見えないものを見るのが苦手な自閉症スペクトラム障害。対人トラブルに結びつくことが多いのです。
また、自分の内面を言葉にするのが苦手なため、気持ちを明確に言葉にすることができないこともあります。
特に女の子だと友達関係のトラブルによって不登校になったり、周りに嫌われないようにするストレスからうつになるケースがあります。

自閉症でよくみられる繊細さ
感覚過敏も大きなストレス要因になります。
自閉症スペクトラム障害を持つ人は、感覚過敏を持っていることが少なくありません。
学校での子供達の声に耐えられなかったり、食感が苦手で給食が食べられなかったり、症状は様々です。
この感覚過敏がストレッサーになり、抑うつに繋がる可能性が言われています。
記憶も鮮明なことが多いと言われており、フラッシュバックなどに繋がることも少なくありません。不安になりやすいのです。
こちらの記事もぜひ参考にしてください。
わがままではない 自閉症スペクトラム障害の子が偏食になりやすい理由
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自閉症スペクトラム障害の誤解されやすさ
時に自閉症スペクトラム障害の症状は問題行動として現れます。
声をあげたり、自分を傷つけたり、周りを攻撃したり。それにはもちろん彼らなりに伝えたいことやストレスがあり、怒れば良いものではありません。
しかし、理解が浸透していないと適切な指導は難しいです。
自閉症スペクトラム障害の症状が誤解されてしまうことが、自分に対しての否定的な考えにつながります。
結果として自閉症スペクトラム障害当事者のストレスの原因になることがあります。


ASDの子の周りにある環境
4つめにあげられるのが周りの環境です。
自閉症スペクトラム障害を持つ生徒を馬鹿にするような態度を大人が取っていることは残念ながら少なくありません。
また、ASDを持っている本人が虐められていることを認識していなかったり、自閉症を持っている子が混乱して固まったりするといじめがエスカレートすることも少なくありません。
自閉症スペクトラム障害の二次障害を防ぐために
自閉症スペクトラム障害の二次障害を防ぐためには何ができるのでしょうか。
方法としては大きく分けると2つあります。
障害の早期発見
まず、自閉症スペクトラム障害の早期発見が大切です。
実は、二次障害を起こして病院に訪れた自閉症スペクトラム障害児の9割がそこで障害がわかったという例も報告されてます。
障害がわからないために適切な支援や理解を得られず、二次障害が出てしまったケースも。
自閉症スペクトラム障害であることがわかれば、家族、地域、学校、そして本人にできる支援が増えていきます。
早めの診断、早めの支援につなげることが大切です。

ストレスの軽減
二次障害を引き起こしているのは、ストレスが多いです。
そのため、本人のストレスを減らしてあげることが大切になっています。
特に学校は刺激が多く、また関わり合いの場所。
そこで、何をすれば自閉症スペクトラム障害を持つ子供達が安心して過ごすことができるのかを考えていく必要があります。
親へのカウンセリングや専門家の学校への支援も大切になっています。
まとめ
自閉症スペクトラム障害の二次障害についての紹介でした。
ストレスに敏感な、そして対人トラブルを起こしやすい自閉症スペクトラム障害の特性。
周りの理解の少なさも加わって、新たな障害を引き起こしてしまうことがあるのです。
しかし、二次障害を持つことは余計にハンディキャップを負うことであり、できる限り防いでいくことが大切です。
自閉症を持つ子への理解が広まり、二次障害が少しでもれば良いなあと思っています。
参考文献
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