幻聴や妄想などの陽性症状、ひきこもりや感情が薄くなる陰性症状、認知機能の障害がでてくる統合失調症。
100人に1人がなる病気で、決してめずらしくはありません。
「ありふれた」疾患だからこそ統合失調症にはどのような人がなりやすいの?と思う方も多いでしょう。
まだまだ研究段階の統合失調症について、最新の論文からわかりやすく原因をまとめました。
統合失調症は遺伝×環境
ほとんどの疾患に言えることですが、統合失調症には遺伝と環境のどちらも関係しています。
逆にいえば、遺伝だけで発症することも、環境だけで発症するものでもありません。そのため、親の育て方のせいでも本人のせいでもないのです。
遺伝要因について
まずは統合失調症の遺伝要因についてご紹介します。統合失調症には遺伝が関係していると報告されています。
これは、統合失調症特有なのではなく、他にも多くの疾患(精神・身体両方)が遺伝が関係していることを覚えておきましょう。
また、統合失調症を引き起こす1要因でしかないので、「家族が統合失調症だから100%発症する」といったことはありません。
統合失調症の遺伝率
統合失調症には遺伝が関係していると報告されています。
双子への調査では、一卵性の双子の片方が統合失調症を発症した時、もう一方も発症した確率は41~65%ととても高くなっています。また、統合失調症を持っている人がいる家族の遺伝子をしらべる(連載電子解析)で、16個ほど統合失調症に関わる遺伝子が見つかっています。
また、統合失調症を持っているお母さんからうまれた赤ちゃんは、養子に出され他の人に育てられた場合でも発症率が高くなりました。これにより、統合失調症は親の育て方によって発症するわけではないこともわかります。
まとめると、さまざまな研究結果から、危険因子が遺伝する可能性は80%(10人に8人)と考えられてます。
ストレス
統合失調症には環境要因も関わっています。ストレスの中でも人生で大きな意味を持つイベント(ライフイベント)が大きく関係していると考えられています。
- 健康状態の変化
- 引越し
- 失敗した経験
- 人との関わりの変化
また、イギリスでの移民の調査から、孤立感や差別などの社会的ストレスも統合失調症の発症と関連しているとされています。
大麻
日本ではあまりなじみがありませんが、大麻の使用は統合失調症の発症に関連していると報告されています。
ニュージーランドでは4倍、スウェーデンでは6倍も発症率があがっていました。しかし全員が発症するわけではないので、特定の遺伝子(COMT遺伝子)と大麻の使用が両方行われると発症すると考えられています。
出産環境
環境要因のなかでも出産時の環境はおおきな影響があると考えられています。
一見噂のようにきこえますが、ここで紹介するのは研究が行われており、その原因の解明が今進んでいるものです。
繰り返しになりますが、この出産環境だったから100%統合失調症を発症するわけではありません。あくまで要因の1つです。
産科合併症
産科合併症、特に低体重で生まれてくることは統合失調症が2〜3倍発症しやすくなると報告されています。
遺伝の影響を受けやすく、環境にも敏感になってしまいます。また、統合失調症と脳の発達に関連はあるため、お腹の中で十分に脳の大きさが発達しないことも関係しているとも言われています。
冬生まれ
一見噂のようにおもえますが、日本をふくめ様々な国で報告されていることです。
夏生まれと冬生まれでは、冬生まれのほうが統合失調症になったケースがおおかったのです。
生まれた時の外の気温や感染症、お母さんのホルモンなどの関連性が今研究されています。
まとめ
統合失調症には、環境要因と遺伝要因が関わっており、様々な条件が重なった時に発症します。
そして、これは統合失調症のみではなく、他のさまざまな病気にあてはまることです。
統合失調症、本人や親の育て方のせいではありません。これを忘れずに、正しい知識を持ちましょう。
今後、統合失調症の原因についての研究がすすめばまたご紹介しようと思います。
参考文献
沼田周助 ; 木下誠, ここまでわかった統合失調症の病態メカニズム, Mebio, 2015, Vol.32 (10), p.4-10
功刀浩, 統合失調症と遺伝環境相互作用, 分子精神医学, 2006, Vol.6 (2), p.141-148
糸川昌成,統合失調症とストレス, ライフ・サイエンス, MEDICAMENT NEWS, 2004 (1794), p.1-3