もっと知ろう 発達障害 自閉症スペクトラム障害

顔を覚えられない。それって発達障害のせいかも

「人の顔を覚えられない」

それって社会生きていく上ですごく大変なことですよね。

実は、人の顔を覚えにくいのも発達障害の1つである、自閉症スペクトラム障害が影響している可能性があります。

発達障害のない人がもっている「人の顔に注目しやすい」特性がないこと、社会的な意味を見出すのが苦手なことなどが関係しています。また、相貌失認などとちがって表情を読むのも苦手なんです。

ASDの顔や表情にまつわるあれこれをご紹介します。

ポイント

  • ASDは顔を覚えるのが苦手
  • 顔への意味を見出せない社会性の障害が関わっている
  • 細部にしか注目できない視覚特性も関係している
  • 目で見た情報をまとめるのも苦手

そもそも人間は顔を覚えやすい特性がある。

そもそもの話、人間は「物より顔を記憶しやすい」という特徴があります。

例えば、目にした顔が知り合いかどうか一瞬でわかりますが、ものについて同じことをするのは大変ですよね。

詳しくないと、今見た黒い車と昨日見た黒い車の違いはわからないし・・・。

犬を飼っていないとなかなか犬の種類ってわからないし・・・。

 

これには様々な要因があると考えられています。特に有力なのは「目や顔は赤ちゃんに注目を集めやすく、目や顔に特化するように神経が変化している」というものです。

実験から、生後数時間の赤ちゃんからみられる特徴です。

最初に目に興味をもち、その後顔の記憶や理解が大人になるまでの時間をかけて発達していきます。

つまり、顔を覚えやすくなるように脳が発達しているし、そのように生まれてくるんです。

 

しかし、自閉症スペクトラム障害を持つ人ではこの効果が薄いことがわかってきます。

つまり、自然と顔を見ることが幼い頃から少なく、うまく神経が発達しない可能性があるのです。これにより、顔を覚えるのが苦手になってしまいます。

 

 

自閉症スペクトラム障害と記憶についてはこちらの記事も合わせてご覧ください。

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「ASD=記憶力がいい」はどこから?自閉症に関する記憶の特徴

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ASDは顔の記憶力が低い

自閉症スペクトラム障害と顔、正確には顔と記憶についての研究はたくさん行われていきました。そして、表情を読み取る能力と相手の顔を覚える能力が低いことがわかってきました。

なぜ「顔をおぼえるのが苦手」という症状が現れるんでしょうか。そこには様々な理由があるとされています。ここでは4つご紹介します。

 

自分から社会的な意味を見出せない

 

定型発達の人の多くは、社会的に重要な意味を持つ、相手の顔に自然と注目します。これは、幼い頃(生まれて数時間の子供から)見られる現象です。しかし、ASDの人は自然に顔に注目することがありません。

また、発達障害を持つ子の多くは「聞こえているのに返事ができない」と言った現象があります。刺激をうまく反応で示せないことがあります。

そして、顔の記憶でも同じことが起きている可能性があります。

目では見えているのに、意味があるものとして記憶したりコミュニケーションに活用したりできません。

顔だけに特別に注目することがないため、神経が顔に特化するように発達しないのです。そのため、顔を覚えることが苦手ーというか得意にならないのです。

トミー
初対面の人にあっても顔を覚えて情報を得ようってすることが少ないのかな?

 

人から言われると社会的意味を見出せる

ここでポイントなのは自閉症スペクトラム障害を持つ人は、社会的意味を見出せないことが障害ではありません

自然に注意を向けられないことが障害なのです。

よって、注目するように言われると顔をみることができます。(顔を覚えられるかはまだわかりませんが)

また、ソーシャルスキルトレーニングで改善するとも言われています。

 

顔の全体をみないで処理している

 

自閉症スペクトラム障害は、視野(注目してみている範囲)もかなり小さいことがわかっています。そしてこの視線の特性が顔を見るときにも使われている可能性があります。

私たちの多くは、人の顔を見る時全体を見る傾向があります。しかし、自閉症スペクトラム障害をも持っている人は、視野が狭いため、全体で見ることが苦手です。(局所優位)つまり、顔の全体ではなく一部のパーツのみをみて顔を判断しているのです。

情報量が少ないため、顔を覚えることが困難に…という風になります。

トミー
はめちゃくちゃこのパターンで、人の認識は髪型と目でしています。自分の母親やもはや自分の顔の全体像もよくわかっていなかったり・・・。とにかく顔を覚えられません
トミー
待ち合わせなんかは相手に見つけてもらうか、声などで判断しています。あとは髪型とか服で判断してることも。

 

目をみている時間が短い

 

先ほども書いたように、人間は生まれながらにして目に注目する特性があります。

しかし、ASDのような発達障害を持つ人では、この「目」に対する注目が低いのです。

また、自閉症スペクトラム障害を持つ人は脳の「扁桃体」という部分の大きさに異常があるという報告があります。そして、この扁桃体がアイコンタクトに大きな役割を果たしているという研究結果があります。

つまり、自閉症スペクトラム障害を持つ人は、脳の仕組みにより生まれつき目に興味を持ちにくく、顔を見る経験が少ないため神経が発達していないと考えられるのです。その結果が「顔を覚えられない!」という現象になるのです。

 

トミー
小さい時は「目を見なさい!」なんて怒られてたことが多かったです。

余談ですが、自閉症スペクトラム障害と真逆の性質を持つ「ウィリアムズ症候群」を持っている人は不自然に目を長く見てしまうとも報告されています。

 

発達障害による脳の機能障害

最後に、脳の機能障害仮説をご紹介します。ASDの人が顔を覚えたり、注目するのが苦手なのは脳の機能障害によるものだという研究が発表されています。

目の情報をどう処理するかをしらないと少し難しいのですが、なるべく噛み砕いて説明します。

人は目で見た情報を2つのルートで処理していると考えられています。細かい情報を理解するP系と、大まかな情報を理解するM系です。自閉症スペクトラム障害を持つ人は全体をみて処理することが苦手でしたよね。そのため、M系上のどこかで障害があるのではないかと考えられています。実際にASDではM系の様々な場所で活動の異常が見られています。

詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

https://www.nature.com/articles/nrn1766

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ASDは表情の認知も苦手です

発達障害を持つ人は、相手の表情を理解することも苦手です。それには、ASDのある特徴が関わっているとされています。それが情報の統合が苦手なことです。

情報統合が苦手

私たちは、目や耳などから得た様々な情報をまとめて(統合して)1つの情報にしてから理解しています。

ASDを持つ人はこの統合する能力が低いことが様々な実験からわかっています。

表情を理解するにはたくさんの情報が必要なため、うまく処理しきれなくなってしまうのです。これが、顔の表情を理解するのが苦手な要因の1つと言われています。

 

相貌失認と発達障害の違い

相貌失認は顔自体が認識できない病気です。一方、ASDを持つ人は表情認知が苦手なこと、いわれれば識別はできることから別の原因があるのではないかと考えられています。

専門用語でいうと、自閉症はより高次の視覚野の異常だと考えられています。

 

まとめ

「人の顔を覚えられない」という悩みは、自閉症スペクトラム障害の特性の影響の一つの可能性が高いことがわかってきました。

生まれつきの特性や、脳の少し異なっていることなどが「顔が覚えられない」という悩みにつながっているのです。

 

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参考文献

Behrmann, M., Thomas, C., & Humphreys, K. (2006). Seeing it differently : visual processing in autism. Trends in Cognitive Sciences, 10, 258-264.

Teodora Gliga􏰅 and Gergely Csibra, Seeing the face through the eyes: a developmental perspective on face expertise, Progress in Brain Research, Vol. 164, pp. 323-339, 2007

顔を科学する : 適応と障害の脳科学 / 山口真美, 柿木隆介編, 山口, 真美 (1964-) 柿木, 隆介, 東京 : 東京大学出版会, 2013.

Johnson, Mark H London: Nature Publishing Group, Subcortical face processing, Nature reviews. Neuroscience, 2005-10, Vol.6 (10), p.766-774

Johnson, Mark H ; Dziurawiec, Suzanne ; Ellis, Hadyn ; Morton, John, Newborns' preferential tracking of face-like stimuli and its subsequent decline,  Amsterdam: Elsevier B.V Cognition, 1991, Vol.40 (1), p.1-19

 

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mido

NeBA MEDIAリーダー。慶應義塾大学総合政策学部1年。大学で認知心理学と視線処理を用いた、定量的な自閉症の診断を研究しています。ASD当事者。概日リズム障害、不登校なども経験済み。中高時代はカナダ・BC州に在住

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