自閉症スペクトラム障害を持つ子供は、そうでない子供と比べて不登校になるリスクが高いです。
不登校の4人に1人がなんらかの発達障害を持っていること、そしてその大半が自閉症スペクトラム障害を持っている可能性があることが報告されています。
それではどうして不登校になりやすいのか、またどんな対応があるのかをみていきましょう。
*ここで紹介するのは全員に当てはまるわけではありません。自閉症スペクトラム障害を持つ子供達の特性はそれぞれ異なり、それにそった支援が必要です。
わからないことは、地域など近くの専門家に相談するようにしましょう。
もくじ
自閉症スペクトラム障害を持つ子が不登校になりやすい原因
自閉症スペクトラム障害を持つ子供達に置いて、不登校は二次障害と考えられます。
それではどうして不登校になるリスクが高いのでしょうか?
もちろん一人ひとりによって異なりますが、大きく分けて3つの原因があります。
自閉症スペクトラム障害の特性
まず最初に上げられるのが、自閉症スペクトラム障害の特性である、対人関係の苦手さやこだわりです。興味の偏りがあったり、自分のルールがある子供達。
同世代の子供達と同じように振舞うことが大変なのです。
また、ルールを守ることに真面目すぎたり、言葉を言葉通りにしか受け取れなかったり、トラブルになってしまうこともあります。
一方、馴染んでいるように見える子でも、自分を押し殺して周りに合わせている可能性があります。そうすると、ストレスから心身症(原因不明の頭痛や腹痛などの症状)が出てしまうことがあります。

感覚過敏
自閉症スペクトラム障害を持つ子供達の多くは感覚過敏を持っていると言われています。それにより、教室での刺激が強かったり、給食が食べられなかったりがあるのです。これがストレスとなり、不登校に繋がっていることも。
特に感覚過敏は周りから理解されにくく、わがままをいっているように取られてしまうこともあるのです。
自閉症スペクトラム障害による行為障害
行為障害とは他の人を傷つけたり、自分を傷つけたり、ものを壊すなどの症状です。
自閉症スペクトラム障害の特徴で行為障害が起きているにもかかわらず、周りから理解されないことがあります。
これは、特に知的な遅れがない自閉症スペクトラム障害の子供によくみられます。
周りから叱責され、自信を失っているケースもあるので、早い段階での支援が必要です。
特別な支援が必要
自閉症スペクトラム障害を持つ不登校の子供達への支援は、その特性や将来に合わせた対応が必要になっています。
ここで大切なのは「普通に拘らないこと」です。
それでは例のいくつかをみていきましょう
学校以外の居場所をつくる
自閉症スペクトラム障害を持つ不登校の子の対応で難しいのは、環境が変わらないと再不登校のリスクが高いことです。ニーズに対応していないことでまた不安になってしまうことも。
そして残念ながら、学校全体がその子の特性を理解すること、学校のシステムを変えることは難しいのです。
通常学級に戻ることに拘らず、特別支援教育や、別室登校、適応指導教室に通うことも視野に入れていきましょう。
進路を考える
自閉症スペクトラム障害の不登校への対応で大切なことは、将来にそった進路を考えることです。何も、普通科の高校にいき、大学にいかなくてはいけないわけではありません。
長い視野で、自閉症スペクトラム障害を持つ子供にあった道を探すことが大切です。
本人の興味を探しその進路にあった学校や学部を選ぶことで、登校への意欲が出ることがあります。



保護者の支援をする
自己表現が苦手な自閉症スペクトラム障害を持つ子供たち。ついつい、保護者の方が過保護や過干渉になってしまうケースもあります。
また、子供の障害を受け入れることが難しいことも。医療や自治体の支援を通して、子供の現状を受け入れ、共に自閉症スペクトラム障害を持つ子供たちの適応する場所を探すことはとても大切です。
また、依存関係の解消や子供の家庭内暴力・反抗といった問題行動への対処にも繋がっていきます。
早い段階で専門家に相談すること、地域のサービスを使うことなどが大切です。

治療を行う
昼夜逆転や他傷・自傷、家庭内暴力と言った行動障害が現れている場合、専門的な治療が必要なことがあります。程度や支援方法を考えて、メニューを作ることが大切です。
方法としては、通院での行動療法や薬物療法、短期入院などの方法があります。
まとめ
自閉症スペクトラム障害を持つ子供が不登校のリスクが高い理由と、対応方法のご紹介でした。不登校になっても焦らず、一人ひとりにそった方法を学校や専門機関と一緒に探していくことが大切です。
参考文献
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