発達障害をつ方で「発達障害の強みってなんだろう」と感じる方は多いのではないでしょうか。
芸術家タイプって言われても具体的じゃないし・・・。
発達障害って診断されて今後が心配・・・。
本記事では、認知心理学をメインに大学で学んでいる学生が、心理学の観点から「発達障害(自閉スペクトラム症)の得意なこと・才能」をまとめていきます。
最後に特性を踏まえて向いているかも?という職業などもご紹介します。
こんな方におすすめ
- 発達障害の当事者で自分の得意なことがしりたい
- 心理学に興味がある
- 自閉症の才能について興味がある
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もくじ
発達障害は天才なのか 2Eや才能教育って?
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発達障害を持つ人は「細かいことに注意がむきやすい」
自閉スペクトラム症の人は「細かいことに注意がむきやすい」という特性が報告されています。実際にどういうことなのか体験してみましょう。
上の図形は何でしょうか。
S?5?H?
上の図形は小さなHが大きなS(もしくは5)を作っていますよね。
実は多くの人にとって大きなS(もしくは5)を探す方が小さなHをさがすより簡単なんです。
なぜかというと、多くの人にとって基本的に大きなまとまりを先にとらえることが得意なんです(ゲシュタルト的知覚)。
そしてその多くの人に含まれないのが自閉スペクトラム症を持つ人(の一部)になります。
心理学では、上の図形(Navonの階層文字課題)を用いた実験を行い、自閉症の人や自閉傾向が高い人の方が小さいHを捉えることが得意だと報告しました。
発達障害を持つ人は「大きなまとまりとして捉えることが苦手」と言われています。「細かいことを捉えるのが上手」「大きなまとまりを無視することが上手」と言い換えることができます。
上の図形の例では、小さなHをみつけることが得意だったり、なかなか大きなS(もしくは5)が見えなかったりするんです。
自閉スペクトラム症の症状を説明する特性
「細かいことを捉えるのが上手」「大きなまとまりを無視することが上手」はわかりやすく「木をみて森を見ず」と言われます。木1本には気がつくけど、森であることには気が付かないんです。
「木をみて森を見ず」の現象から、心理学者たちはさまざまな「仮説」を作りました。心理学による仮説は発達障害の人の得意なことや才能を見つけるためにとても重要です。
弱い全体的統合仮説(Weak central coherence Theory)
自閉スペクトラム症の人は「まとまりでとらえることが苦手」だという仮説です。
その後の研究からまとまりでとらえる能力がないのではなく「まとまりをとらえろと言われないとできない」可能性が報告されてきました。
つまり、多くの人にとってまとまりでとらえることがデフォルトなのに対し、自閉症の人は細かい情報を捉えるのがデフォルトなのです。
亢進した知覚機能仮説(Enhanced Perceptual Functioning)
亢進した知覚機能仮説はさきほどご紹介したの弱い全体的統合仮説とにています。しかし、この仮説では「細かい情報をとらえる能力が優れすぎている」と考えます。
もともとはサヴァン症候群(重い自閉症と天才的能力を持つ人)の説明に用いられていました。現在では、幅広い自閉症の人で見られると言われています。
自閉スペクトラム指数(AQ)のカテゴリーの1つ
自閉症かどうかのスクリーニングを行うときに用いられる自閉スペクトラム指数(AQ)でも「局所への注意」(細かいところがどの程度気になるか)を見る項目があります。
細かいことが気になるのは自閉症の特徴の一つなんです。
目だけじゃない!音でも言葉でもみられる症状
今までは目から入る情報についてお話ししてきましたが、耳からの情報でも「細かいことに気が付きやすい」という特徴は報告されています。
自閉スペクトラム症と音声の研究
発達障害を持つ人は「音のピッチに敏感」と報告されています。
これは、全体のメロディより細かい1音1音に注目できるからだと考えられます。
実は絶対音感者に自閉症者は多いなんて研究もあったり・・・!ASD×音楽の相性の良さは心理学を通すと偶然ではないのです。
自閉スペクトラム症と言語の研究
心理学者は、目や耳以外でもないのだろうか?と課題を考えました。言葉を使うということでも、「木をみて森を見ず」な症状は報告されるようになりました。
例えば「The sea tastes salts and _____」(海は味がするの、塩と___)という文章があるとします。___には何をいれますか?
海は塩と水の味がしますよね。なので一般的な答えは水になります。しかし、自閉スペクトラム症を持つ子供の一部は「こしょう」って答えたんです。なんでかって?「塩とこしょう」ってよくセットになっているからでしょう。
つまり、海の味は〜といった文章全体ではなく、塩と〇〇!の部分(細かい情報)だけみて判断していることがわかります。
弱い全体的統合仮説や弱い全体的統合仮説は、幅広い「発達障害あるある」を説明できるかもしれません。
自閉症の特性は何に活かせる??何が得意?
自閉スペクトラム症の「細かい情報に気がつきやすい」という認知特性はどのような場面で活かせるでしょうか。具体的な職業で見ていきましょう。
心理学の論文では「校正」という仕事が1つあげられていました。文字の間違いを見つける校正では、細かいところに目が行くのは大切です。確かに発達障害の人が得意かもしれません。
「細かいミスを見つけることが得意」と考えると、細かい計算をしたり、プログラミングのエラーをみつけることも得意かもしれません。アスペルガーの人がプログラミングが得意といわれているのにも心理学的に説明が可能なんです。
「細かいことに気を使える」と考えると、わずかな量の差が重要な職業なんかも向いているかもしれませんね。
さらに、発達障害の人は研究者に向いているよね!なんていわれることも多いのですが、「小さいことが気になる!」という感情は研究において欠かせないでしょう。
ここで紹介したのは実際に言われていることやわたしが思いついたことですが、
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細かいミスを見つけることが得意
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細かいことに気を使える
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細かい変化に気がつく
と考えると、できることが多いでのはないでしょうか。
自分を再認識するために
心理学から報告されている「自閉症あるある」はもちろんすべての発達障害の人にあてはまるわけではありません。
しかし、自分が得意なことや苦手なことを分析するきっかけになればよいなと感じています。
まとめ
認知心理学の研究から発達障害の人の特性と得意なことについてご紹介しました!自分ができることは何か、得意なことは何か考える上で役に立てば嬉しいです。
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発達障害の人は細かいことに気がむきやすい
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細かいミスを見つけることが得意
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細かい変化に気がつく人
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自分を理解するきっかかけに!
参考文献
frith, U. (1989). Autism: Explaining the Enigma. U.K: Basil Blackwell. 冨 田 真 紀・ 清 水 康 夫
Happé, F., & Frith, U. “The weak coherence account: detail-focused cognitive style in autism spectrum disorders.” Journal of Autism and Developmental Disorders.36.(2006):5–25.
Navon, David. “The Forest Revisited: More on Global Precedence.” Psychological research1 (1981): 1–32.
Mottron. L., Dawson. M., Soulie` res. I., Hubert. B., & Burack, J. “Enhanced perceptual functioning in autism: An update, and eight principles of autistic perception.” Journal of Autism and Developmental Disorders, 36 (2006): 27-43.