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原因は脳?うつ病で認知機能・記憶力は下がります

「うつ病になってから知能が低下した気がする。頭が回らない」

「記憶力が悪くなった」

「前みたいに仕事ができない」

これは、うつ病を経験したことのあるひとなら一度は感じたことはあるのではないでしょうか。

しかし、どうしてなのか、うつ病と関連あるのかはあまり知っている方は少ないように思えます。

 

うつ病の理解のためにも、「認知機能」についてみていきましょう。

 

うつ病と認知機能の低下は関連がある

結論からいうと、うつ病と認知機能の低下には関連があることがわかっています。これは、うつ病が寛解(症状が治っている状態)の時でも続くことがあります。

認知機能の中でも特に下がると報告されているのが以下の能力です。

 

  • 精神運動速度
  • 言語性記憶
  • 注意
  • 作業記憶
  • 遂行機能

ルーシー
うつ病になってから、何かをやり遂げることが難しくなった気がします。例えば目標をやり切ることができなくなりました。

そもそも認知機能とは

そもそもの話なのですが、認知機能とはなんなのでしょうか?

厚生労働省のサイトでは「理解・判断・理論などの知的機能」と説明しています。

具体的には記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの機能のことです。

なんとなく「そういう感じかあ」というイメージが掴めれば大丈夫です!

 

 

うつ病が記憶に与える影響

うつ病が記憶に与える影響はどのようなものがあるのでしょうか。記憶障害について詳しく見ていきましょう。

 

うつの記憶障害の特徴

うつ病の記憶障害は、うつ病が寛解(症状が治った状態)でも続きます。そしてそのあとはうつ病の型によっても異なります。

例えば単一エピソードの人は3年経つとエピソード記憶の障害はなくなる場合が多いです。

しかし、反復性うつの人は寛解状態が3年経っていても記憶機能が戻らないことが多かったと報告されています。

実際に言語性記憶のスコアはうつ病のエピソード回数に影響されているという結果が出ています。今までのうつになった回数が記憶障害の予後に影響を与えているんです。

 

エピソード記憶

昨日の出来事が思い出せない。前に頼んだことを忘れてる。

こんな経験ありませんか?

うつ病で下がると言われている記憶の一つにエピソード記憶があります。

エピソード記憶とは「特定の場所や時間と結びついた経験に関連する記憶」のことを指します。簡単にいうと、過去の自分の経験したことの記憶です。

うつ病になると、このエピソード記憶が障害されてしまい、記憶がすっぽりと抜け落ちたように感じてしまいます。

 

ちなみに家族の名前や誕生日など、場所や経験に関係ない社会的に共有された知識のことは「意味記憶」と呼ばれます。

 

トミー
昨日あった人の顔や声が思い出せないことが増えました。病院の予約が覚えられなかったり、薬を飲んだかが思い出せないこともありました。

 

うつ病と時間感覚

うつ病に関してインタビューしていたときに、記憶に関する興味深いことを聞いたのでこちらもご紹介します。

 

トミー
それよりも大変だったのは、「時間」が流れているという感覚がなくなってしまったことです。その日その日を生きるのに精一杯になっていました。
チェリー
記憶の時系列とか、曜日も分からず、気がつくと一週間経っているみたいな状態です
トミー
「今ここに生きている」という感覚もなくなってしまい、現実感がなくなっていました。夢の中にふわふわいる感じで。
トミー
記憶っていう束になっているものがバラバラになっていて、思い出せるんですけど、意識的に思い出せなくなってしまう

トミー
「記憶が低下する」以上のことを当事者は抱えていると思います。[/st-kaiwa3]

 

 

 ワーキングメモリ (作業記憶)

ワーキングメモリは物事を考えるときに使う記憶です。何かを処理するため一時的に必要な情報を記憶し、処理が終わると忘れます。

わかりやすい例が暗算です。「18+24は?」と聞かれると、私たちの脳は「18」「24」という数字と「たす」という処理を頭にいれますよね。そして「42」であるとわかります。しかし、なんの数字を足したのかは時間が経つに連れて忘れてしまいますよね。このような短期記憶のようなものです。

 

うつ病になるとこのワーキングメモリも低下することがわかっています。

サム
流れが覚えられないので、授業についていくことや本を読むことが難しくなりました。

 

仮性認知症とうつ病

精神疾患の世界では「仮性認知症」という言葉があります。簡単にいうと、認知症ではないが認知症のような認知機能の低下を指します。

この、仮性認知症はうつ病でもみられ、年を追うごとに増えていきます。

うつ病を発症して1年で仮性認知症の症状があるひとは3%ですが、3年後には2人に1人まで増えたことが報告されています。

 

うつ病で認知機能が下がる理由

それでは、なぜうつ病で認知機能は下がるのでしょうか。

「病気の症状だから」と言ってしまえばそれまでなのですが、最近はもう少し詳しいことがわかってきました。

 

前頭葉

うつ病は前頭葉の障害とも言われることがあります。脳画像研究から前頭葉や帯状回という部分がなんらかで障害されていることがわかっています。そして、寛解しても回復しないのです。

具体的には扁桃体が異常に活動したりと前頭皮質の活動が低下すると言われています。

 

海馬

アルツハイマーで萎縮することが知られている海馬。記憶や学習についての脳の部分です。

実は近年、うつ病でも同じように萎縮することが脳画像の解析からわかってきました。そして、うつ病が寛解しても海馬は萎縮したままのことがあるようです。

 

うつ病の認知機能低下への対処法

それでは、うつ病の認知機能の低下にはどのような対処法があるのでしょうか。現在うつ病の療法はたくさんありますが、中でも認知機能に関連した2つをご紹介します。

 

薬物療法(抗うつ薬)

うつ病の治療として一番に思いつくのは薬、抗うつ薬でしょう。これには様々な効果がありますが、認知機能についていうと海馬の萎縮した状態の回復にやくに立っていると報告されています。また、扁桃体の過活動を抑える効果もあります。

 

認知行動療法

 

行動認知療法は抗うつ剤とは違うところに効果があります。前頭皮質の働きを高め、認知機能の向上につなげていく役割があります。

 

 認知リハビリテーション・トレーニング

障害された機能を反復的に刺激することで改善する方法があります。これがメタ記憶トレーニングや記憶訓練ドリルと呼ばれるものです。

 

まとめ

うつ病と認知機能についてのご紹介でした。

うつ病で今まで通りにできないのは脳と病気のせいであり、決して本人や怠けが原因ではありません。

そして、認知機能の回復についての研究も進んでいます。

うつ病の症状に苦しむ人、偏見を減らすためにも今後の研究も注目していきたいです。

 

参考文献

中込和幸, うつ病の認知機能とNIRS・脳機能画像, 分子精神医学, 2011, Vol.11(3), pp.253-255

 

馬場元, うつ病における認知機能障害, 臨床精神医学, 2013, Vol.42(12), pp.1469-1477

 

厚生労働省, 認知機能https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-043.html

 

野田 隆政 ; 小久保 奈緒美 ; 中澤 佳奈子 ; 西 優子 ; 小関 俊祐 ; 中込 和幸,うつ病の発症は予防できるか,減らすことができるのか―認知機能障害とレジリエンスの視点からのうつ病予防の可能性, 医学書院, 2014-08-15, Vol.56 (8), p.655-663

三上章允, 脳の世界, https://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/index.html

 

 



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mido

NeBA MEDIAリーダー。慶應義塾大学総合政策学部1年。大学で認知心理学と視線処理を用いた、定量的な自閉症の診断を研究しています。ASD当事者。概日リズム障害、不登校なども経験済み。中高時代はカナダ・BC州に在住

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