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会話を聞き取ることが苦手なのはなぜ?発達障害やADPについて

難聴など聴覚に障害があるわけでもないのになぜか音声を聞き取りにくい症状があります。難聴のように音が全て聞き取れないわけではなく、人の声(音声)だけなのもポイントです。BGMや他の人の声など雑音がある状況で聞き取りにくいと感じる人も多いようです。

 

今回は、なぜ聞き取りにくいのかについて心理学や音響学、音声学の研究をご紹介します。

 

聴覚情報処理障害(ADP)

会話を聞き取ることが苦手な症状は聴覚情報処理障害(ADP)ということもあります。

現在診断基準は決まっておらず、「聞き取りにくい」という症状を表す言葉として使われています。

これからご紹介する発達障害とも関係があると言われています。

 

発達障害と聞き取りにくさの関係について

発達障害を持つ人の中には音声の聞き取りが苦手な人たちがいます。

自閉症やADHDなどを持っている人たちの一部です。

 

自閉スペクトラム症には「視覚優位」と呼ばれる症状があります。

自閉症の子の中には、目で入った情報の方がうまく処理できる子がいます。(逆に文字を読むのが苦手な子もいます。)

そして、耳からの情報を聞き取るのが苦手な子がいます。

 

ここからは発達障害の1つである自閉スペクトラム症を対象にした研究をご紹介します。

 

どんな音声が聞き取りにくい?(臨床)

人の声の聞き取りにくさについて、臨床(病院など)や本人の話から繰り返し報告されてきました。

 

  • 学校で隣の教室の授業を聞き取ってしまう
  • 先生の言っていることが耳に入ってこない
  • カフェで会話している相手の言っていることが聞き取れない
  • 声から人を判別できない

 

筆者も授業中に先生の声が聴き取りにくいので、板書や教科書をみてまなんでいます。

 

どんな音声が聞き取りにくい?(心理実験)

音声が聞き取りにくいからといって全ての音が聞き取れないわけではありません。心理学の実験から、以下のことが報告されました。

  • 雑音があると音声がききにくい
  • 聞き慣れていない声は聞き取りにくい

 

雑音があると音声がききにくい

ざわざわした砂嵐のような音が流れているところでどのくらい聞き取れたかを計測しました。実験では雑音の大きさと音声の大きさの割合を変えました。

自閉症の人たちは、聞き取るためには雑音が小さくないといけないという結果がでました。

つまり雑音があると健常のひとより音声が聴き取りにくかったということになります。

 

聞き慣れていない声は聞き取りにくい

有名人の声の聞き取りに、健常者と自閉症者で違いはみられませんでした。そのため、聞き慣れた声の聞き取りには問題がない可能性があります。

新しい声の学習は苦手なことが報告されています。

 

どうして音声の聞き取りが苦手なの?

音声の聞き取りが苦手なのには、さまざまな理由があると考えられます。

  • 聴覚に問題がある場合
  • 脳の処理に問題がある場合
  • 言語の処理に問題がある場合
  • 注意に問題がある場合

 

聴覚に問題がある場合

音は波でできている。そう学校で習った方は多いと思います。そして音声は「時間」の情報を運んでいます。音声の時間情報(振幅包絡やTFS)は言葉の情報を運んでいるのです。

 

音声の時間情報

音声の時間情報の1つには言葉の情報を運んでいる場所(周波数)があります。時間情報を制限することで、どの時間情報が苦手かを調べることができます。

音響の研究の結果、自閉症者は時間情報の処理が苦手な可能性があることが報告されました。

言葉を聞き取るのに重要な時間情報が苦手→音声の聞き取りが苦手な原因?となるわけです。

 

注意に問題がある場合

自閉症のあるあるとして「母親の声に注意を向けない」「自分の名前を呼ばれても気が付かない」といったものがあります。これは、社会的に意味のある刺激に注意をむけることが苦手なためだと考えられています。

音声が聞き取れないのもうまく注意をむけることができないからかもしれないと報告されています。

 

音の聞き取りは得意なこともある

音声が聞き取りにくいことを紹介してきましたが、音声が苦手でも音の聞き取りは問題がない場合が多いです。絶対音感を持っていたり、メロディの記憶が得意だったりする人もいます。音声と音は異なるのです。

 

まとめ

聴覚情報処理障害(ADP)や発達障害の人の「声が聴き取りにくい」理由についてご紹介しました。音声が聴き取りにくいことについてはまだわかっていないことも多いです。

この記事をよんで少しでも理解がひろまればいいなと思います。

 

参考文献

柏野 牧夫(2015).当事者理解 高機能自閉症スペクトラム障がいの感覚特性 情報処理56(6),558-560.

Alcántara JI, Weisblatt EJL, Moore BCJ, Bolton PF. Speech-in-noise perception in high-functioning individuals with autism or asperger's syndrome. Journal of child psychology and psychiatry. 2004;45(6):1107-1114. 

Schelinski S, Roswandowitz C, von Kriegstein K. Voice identity processing in autism spectrum disorder. Autism research. 2017;10(1):155-168.

Alcántara JI, Cope TE, Cope W, Weisblatt EJ. Auditory temporal-envelope processing in high-functioning children with autism spectrum disorder. Neuropsychologia. 2012;50(7):1235-1251. 

 Groen WB, Orsouw L, Huurne NP, et al. Intact spectral but abnormal temporal processing of auditory stimuli in autism. J Autism Dev Disord. 2009;39(5):742-750. doi: 10.1007/s10803-008-0682-3.

 

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mido

NeBA MEDIAリーダー。慶應義塾大学総合政策学部1年。大学で認知心理学と視線処理を用いた、定量的な自閉症の診断を研究しています。ASD当事者。概日リズム障害、不登校なども経験済み。中高時代はカナダ・BC州に在住 https://midorisugiyama.weebly.com

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